Q.信託契約を結ぶことにより、所有する不動産の登記はどうなるのですか。
【解説】
不動産を信託財産として、受託者に管理を任せた場合、登記簿に不動産の管理を担う受託者の名前が記載されるというのが、その大きな特徴となります(次項参照)
今まで所有者として登記簿に載っていた人に代わり、財産の管理者である受託者の名前が形式的に欄に入ることになります。
ただ、これは受託者としての肩書がついたうえでの記載であって、あくまで財産権が移ったわけではありません。委任契約や管理委託契約と違い、信託契約ではこのように受託者が形式的な所有者になります。
◆登記簿に受託者の名前が入ることによるメリット
・受託者が所有者として財産の管理が実現可能に
賃貸マンション、アパートや駐車場などの収益物件であれば、所有者が認知症等によって判断能力を喪失した後であっても、借り手その他との契約行為を受託者が貸主として行うことができます。
・受託者が所有者として財産の処分が可能に
委託者が認知症等によって判断能力を失った場合であっても、相続税対策などで所有する不動産を売却する必要があるときには、受託者が売主として売買契約を結ぶことが可能です。
◆登記簿に記載される内容
<所有権に関する事項> 次項の記載例のとおり「所有権移転」とされ、その原因として「平成◯◯年◯月◯日信託」と記され、下に受託者名が載ります。信託を原因とする所有権移転は、受託者があたかも所有権者のように各種の契約行為をできるようにするものですが、実態的財産権の移転はありません。
<信託目録> 登記簿の「信託目録」には信託契約の詳細が記載されます。
・委託者に関する事項・・・・・・・・・・誰が預けたのか
・受託者に関する事項・・・・・・・・・・誰が預かったのか
・受益者に関する事項・・・・・・・・・・この不動産から実質の利益を得るのは誰か
※この時点で預けた人と利益を得る人がイコール(同一人物)の場合、財産の移転はなかったということで、贈与税や取得税などの課税は基本的に発生しません。
・信託の目的・・・・・・・・・・・・・・・何を目的とした信託か
・信託財産の管理方法・・・・・・・受託者はどこまで権限を持っているか
・信託の終了事由・・・・・・・・・・・この信託はいつ終わるか