円満な資産承継するための選択肢の一つとして〜成年後見人制度や遺書と組み合わせる

成年後見制度とその限界

Q. 認知症などによって意思判断能力が失われた場合には「成年後見制度」を活用することで、資産・事業承継対策は万全に行われると考えてよいのでしょうか。

【解説】

成年後見制度とは、認知症や病気、あるいは知的障害、精神障害等の事情により、意思判断能力が万全ではない人の法律行為や財産の管理を本人に代わって行う制度です。

後見人は本人のために財産をしっかり守るという職務を負うことから、家庭裁判所もしくは後見監督人の指導・監督下に置かれます。

したがって、本人にとって本当に意味のある、合理的な理由のある支出しか認められず、推定相続人や、家族にメリットがあるような行為、例えば、将来の相続を見越して生前贈与や財産を整理・処分することは、基本的には認められません。

 つまり、成年後見制度を利用している限りにおいては、柔軟な財産の管理は難しく、家族のための支出や、将来の相続対策を考えたくてもほぼ何もできません。

また、たとえ本人のためであったとしても、積極的な投資や運用なども実行できません。

POINT

成年後見制度の目的は、意思判断能力を失った被後見人の代わりに、後見人が被相続人の財産を守る(減らさない)よう、 強い権限で管理することです。したがって、本人や周囲の希望とは関係なく、「本人にとって最低限必要な支出」しか認められなくなります。 一方で、被保険者の身上監護(介護や医療にかかわる施設入所など)については成年後見制度を利用するしか方法はありません。 以上のことから、家族信託と成年後見制度とをうまく組み合わせて、双方の利点を活かす設計が必要となります。

成年後見制度の利点と課題

Q.成年後見制度を利用する利点と課題を教えてください。

【解説】

<利点> 成年後見関係の申し立ての動機は、1位が預貯金の管理・解約となっています(裁判所「成年後見関係事件の概況-平成26年1月~12月)。

本人確認が必要な預貯金口座からのお金の引き出しには、成年後見制度を使わざるを得ません。

同様に、不動産の処分等の手続きをするという申立ての動機もあります。

 最近では、相続手続上、例えば父親が亡くなり、相続人である母親が認知症というケースにおいて、遺産分割や放棄などの法的なことが一切できなくなることから、成年後見制度を使うこともあります。

<課題>成年後見制度を利用する人の数は、平成26年12月現在、18万5000人前後と言われています。認知症及びその予備軍は全国で860万人以上とされている実態から比べれば、この数字は少ないといえます。

利用する人が少ない理由として、後述の手続きや管理の問題と合わせ、そもそも成年後見制度を使う必要がないということが挙げられます。

支えるべき家族が近くにいれば、預貯金等の財産管理や不動産、賃貸物件の管理、さらには入院入所手続きなども含めて、家族としてある程度現実的な対応は可能ですので、必ずしも成年後見制度の利用が必要とはいえません。

 そしてもう1つは、成年後見制度を利用する際の負担が大きく、できれば使いたくないという人が多いことが挙げられます。成年後見制度を使うと、後見人は年1回、裁判所へ財産の状況や1年間の収支、財産目録等を作成し報告する義務があります。

また、成年後見制度を使ってしまうと、出来ることが限られてしまいます。

例えば、親元に年に一度家族が集まるような場面で、例年どおり親が全員の食事代を払っていたものが、その制度を利用すると会食代は割り勘で参加者の個人負担となります。

成年後見制度は、「対象者の財産を減損させない」ことが目的ですので、「家族や本人の想い、希望」に必ずしも答えられる制度ではないことが、制度利用を躊躇させる理由ともいえます。

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