はじめまして
平成27年1月1日以降に発生する相続から相続税の基礎控除額が引き下げとなり、昨今はマスコミやセミナー等で「相続税対策」を題材にしたものが花盛りとなっています。
そこで取り扱われる内容は、「遺言書を書きましょう」「相続税額を下げる対策をしましょう」という、資産を遺す人の相続が起きた後のことばかりにフォーカスされているものがほとんどとなっています。
確かにそれはそれで大切なことです。しかし、相続が起きた後の対策さえできていれば、それで相続対策は全て終わった、安心と理解されているのであれば、大きな勘違いだといわざるを得ません。
相続や資産承継、事業承継を考える際に大切なことは、いま資産を持っている人が、
- この先、自身の資産を使ってどうやって幸せな人生をすごしていくのか
- そして遺した資産を次の世代にどう円満に継承するのか
ということだと思います。
相続税は少ないにこしたことはありません。しかし、相続税を下げることと、資産を遺す人にとって自分が
希望する豊かな余生をおくることと、残された家族が円満に資産を引き継いでいけることとは、全く別のテーマです。
平成25年に日本は超高齢化社会に突入し、日本人の寿命はかつてないほど飛躍的に延びてきています。
しかし同時に、元気で社会生活をおくってきた期間と、最終的に相続が発生するまでの間には、相当数の人にとって「意思能力や判断能力が失われた期間」があることを無視するわけにはいきません。
人生の大切な期間を心豊かに安心してすごせるように、相続対策や資産承継対策を考える際には、この避けがたい現実を踏まえることが大切です。
当サイトでご紹介する家族信託が、そうした問題を考えるヒントになれば、これに勝る喜びはありません。
◆家族の絆を深める家族信託◆
家族信託は、相続問題や財産管理、そして資産承継を考えるうえで万能なツールではありません。
あくまで自分の希望する財産管理や相続、夢や想いを実現するための選択肢のひとつであり、「遺言制度」や「成年後見制度」など、様々な制度とうまく組み合わせて、自分に合わせた利用方法として検討する事が大切です。
一部の専門家からは、家族信託をして「相続税の減額につながらないから役に立たない」とする声や、あるいは「うまく利用することで「争族」対策に利用できないか」などと考える向きもあるようですが、いずれも適切だとは思いません。
「相続対策」とは、「相続税を下げる仕組み」でもなければ、「遺言書やエンディングノートを書くこと」でもないと思います。むしろ、それらは数多くあるテーマのひとつにしかすぎず、(自身が保有する資産の大小に関係なく)今まで歩んできた足跡や想いを、次の世代にどう託し、どのように活かしてもらえるかを考えることこそが「相続対策」といえるのではないかと思います。
そのためには、財産を遺す側だけが考えるのではなく、財産を遺される側も一緒になって話し合いの機会を持つことにこそ、本当の意味があると考えています。
家族信託を検討する過程では、これまでの家族間では面と向かって交わすことが少なかった「お互いの意思」や「希望」、そして「想い」を知ることになります。
家族の絆を深める最良の機会としても、家族信託は活用できるのです。