Q.家族信託を検討しています。全体としてどのような費用が必要か教えてください。
【解説】
家族信託はまだその組成実務を担う専門家が少なく、組成に伴うコンサルティング費用なども定まっていません。
不動産の登記や公正証書の作成などは、その内容に従い一定の基準で費用が設定されています。しかし、信託制度の活用で最も重要なステップは、信託希望者の考えをきちんとヒアリングして、信託契約の形を設計する段階です。
どのような信託を組むかは、個々の状況や希望によってすべて異なります。
後になって家族内でトラブルが発生することのないよう、事前のヒアリングに十分な時間をかけ、適切な信託組成の設計を行うことが必要であり、この段階に要する費用が最も多くを占めることになります。「家族信託の検討から組成までの流れ」に従い、費用項目を整理したのが次項の表になります。
信託の検討から組成までの流れにおける費用項目
ステップ | どういう費用か | 例えば |
①ヒアリング
信託組成の可否判断 |
信託希望者の考えや現状をヒアリング
信託の活用が適切か否かの判断 |
・相談料※1
(時間チャージなど) |
②信託設計
費用の確認 |
要望に即した信託の設計
専門家報酬も含めた費用の了解 |
・「信託財産の数」及び「評価額※2」連動の費用設定が一般的
・税金や法的な検討が必要な場合、その報酬 |
③関係当事者への説明賛同を得る | 様々な関係者に対し、契約の目的や内容について説明を行い、賛同を得る | |
④信託組成の専門実務 | 信託契約書、公正証書の作成、登記などを実務を進める段階 | ・士業報酬及び登録免許税等の実費 |
⑤信託契約に従った継続的活動 | 信託契約書の規定に従い、「信託監督人」設置の場合の費用
年次の会計報告を行う費用 |
・信託監督人報酬は信託契約書内で決定
・申告費用等 |
※1 初回の相談は無料(もしくは安価設定)としている専門家もあります。
※2 不動産に関する評価額は「固定資産税評価額」を利用するケースが多いようです。
<組成にかかわる費用例>
総資産5,000万円のケース(基本財産:自宅+現金少々)
Ⅰ:信託組成コンサルティングフィー・・・・・・・・・・・32万円※
(⇒コーディネート費用10万円、専門家契約書作成等費用22万円)
Ⅱ:公正証書の作成費用・・・・・・・・・・・・約3万円
合計費用:35万円(登記費用及び登録免許税等除く)
- 総資産1億円のケース(基本財産:自宅+アパート+現金)
Ⅰ:信託組成コンサルティングフィー・・・・・・・・・・・62万円※
(⇒コーディネーター25万円、専門家契約書作成等費用37万円)
Ⅱ:公正証書の作成費用‥・・・・・・・・・・・・・・・・約8万円
合計費用:70万円(登記費用及び登録免許税等除く)
※おおむね固定資産税評価額の0.5%~1%程度(登録免許税等実費除く)